The Future of Education in Japan (Japanese)

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The Future of Education in Japan (Japanese) Photograph courtesy of the Japan Ministry of Education Culture, Sports, Science and Technology

日本の教育の未来

下村博文大臣が語る文部科学省の見解

下村博文氏は、2012 年 12 月 26 日、安倍晋三総理大臣の指名を受け文部科学大臣に就任。 早稲田大学教育学部を卒業後、1989 年に東京都議会議員選挙に当選、93 年から教育行政に関わるようになった。 東京ジャーナルエグゼクティブ・エディター アントニー・アルジェイミーが、英語教育、大学のグローバル化、 2020 年の東京オリンピックに関する文部科学省の見解について聞いた。

TJ: 現在文部科学省が抱える最大の課題は何で しょうか?
シモムラ : ダーウィンは「進化論」で、強い動物だから、巨大な動物だから生き残れるのではない。環境の変化に対応できる動物・生物であれば残ることができるという風に言っています。教育も時代によって大きなニーズの変化があり、20世紀には大きな成功をもたらした事例であっても、その教育、制度システムは21世紀にはもう通用しません。それをしっかりと 認識して、21世紀に必要な教育に変えられるかどうかが問題です。これは実は日本だけではなく、すべての先進国が同じテーマを問われていますが、それを早く変える、これが日本の文部科学省の最大の課題だと思います。

TJ: 現在の公立学校における英語教育のシステムについて教えてください。
シモムラ: 現在の公立学校における英語教育は、2008 年の学習指導要領の改定を受けて、小学校が2011年度より5年生から外国語活動を開始し、中学校は2012年度からこれまでよりも授業時間を週3コマから4コマに増やし「読む・書く」を重視した指導から「読む・ 書く・話す・聞く」の4技能のバランスのと れた指導を行うことになりました。高等学校は2013年度から、生徒が英語に触れる機会を充実させるため、英語を用いて授業を行うこととなっており、小中高を通じてコミュニケーショ ン能力の育成を図ることとしています。そのような改定を進めております。

TJ: 2020年にはどう変わるでしょうか?
シモムラ: 2020 年から、学習指導要領の全面改訂を予定しております。小学校においては、2 年前倒しし、小学校3年生から英語活動を開始。小学校5、6年生は、初めて英語を教科化する。さらに大学入学者選抜における民間の資格や、検定試験の積極的な活用を行う。また、英語教員の養成・研修を重視させるということ と、JETプログラム等のALT(アシスタント・ ランゲージ・ティーチャー)の拡充によって、今の倍以上の外国人の方々に、日本の英語教育のサポートをお願いをすることによって、ネイティブな英語教育をさらに日本の子供たちに提供していきたいと考えています。

TJ: 日本の英語教育について、ほかに計画はありますか?
シモムラ: 今までの英語教育を大きく変える改 革をしていきたいと思っています。中学、高校と6年間英語の教育をしてきましたが、残念ながら受験のための英語で、「読む・書く・話す・ 聞く」の4技能をマスターする教育をしており ませんでした。これを抜本的に改革していこう と思います。そのためには、例えば英語教育強化地域の拠点事業として、先取りした取り組みをする学校に対する支援を2014 年からスター トする。また、英語教員にも、さらなる英語力、 指導力の向上のための研修をさせたいと思います。さらに英語教育推進リーダーや、専門指導にあたる教員の加配など英語教員を増やすことをしていきたい。また、ALT、外国語指導助手の活用機会をさらに増やしていきたい。こ のようなかたちで2020年から学習指導要領を大幅に変えていきますから、それまでに可能なものから先取りして改革に取り組んでいき たいと考えています。

TJ: 文部科学省は小学生から高校生までの英語力レベルに関してどのような目標を掲げていますか?
シモムラ: 生徒の英語力については、第二期教育振興基本計画の五カ年計画で、中学校卒業段階で英検3級以上、それから高等学校卒業段階では英検準2級程度から2級程度以上を達成した中高校生の割合を50%以上にすることを目標に掲げています。また、高校3年生の英語力を調査したところ、4技能のうち特に「書く・話す」に課題があることがわかり、第二期計画の達成は困難な状況にあることも明 らかになりました。文科省としてはこのような状況を踏まえた次期目標設定を検討するとと もに、次期学習指導要領の改定を含めた抜本的な英語教育改革に取り組んで参りたいと思っております。

TJ: 現在の英語教員養成システムについて教えてください。
シモムラ: 教員免許状を取得するための大学の教職課程において、中学それから高等学校の英語の教員免許状を取得するためには、一つは英語の教科に関する科目を20単位以上、二つ目に英語の指導法に関する科目を取ること、三つ目に英語コミュニケーションに関する科目を取ることを必修としています。小学校の教員免許状を取得するためには、英語の指導法に関する科目2単位を必修とすることに加えて、大半の大学において外国語活動の指導法に関す る科目を必修としています。このようなことによって、英語教育に携わる人の資質能力の向上に努めていきたいと考えています。また、英語 教員の研修については、次期学習指導要領の導入に向けて、2014 年から国がブリティッシュ・ カウンシルと連携し、毎年500名ずつ英語教育推進リーダーを養成し、そのリーダーが各地域における教員の研修を行うことを通じて、すべての小学校教員や中高の英語担当教員が研 修を受ける取り組みを進めています。これからさらに教員の養成・採用と研修の一体改革を行 うことによって、英語教育の指導力向上のため、教員養成・研修のさらなる充実に努めていきたいと思います。

TJ: 2020 年のオリンピックに関する取り組みで、文部科学省が関わっているものについて教えてください。
シモムラ: 2020 年のオリンピック・パラリン ピックは開催都市東京だけでなく、日本全体を元気にし、更なる発展を目指すための大きなチャンスとしてとらえています。新しい日本の大きな発展を果たすために、トータル的な対策をオールジャパンで推進することによって東京大会の効果を日本全国へ広げていきたいと考えています。このため、日本各地の豊かな地域資源を積極的に活用しつつ、スポーツを通じた国際交流やオリンピック・パラリンピッ ク教育、地域のお祭りなどの伝統文化から、現代芸術、ポップカルチャーに関するさまざまな行事まで日本全国各地で幅広く展開し、日本全体での雰囲気を盛り上げ、開会の成功だけでな く、日本全体を元気にして新しい日本の創造を果たしていきたいと考えています。その先駆けとして、2020 年東京大会に向けたムーブメン トを作る一環で、来年 2016 年のリオオリン ピック・パラリンピック大会の直後に、「スポー ツ・文化・ワールド・フォーラム」国際会議を日本で開催したいと思います。これは、2016 年10月に東京・京都で開催する予定で、世界のトップアスリートやアーティスト、また各国 のスポーツ大臣等、100 ヵ国以上の方々に参加してもらい、スポーツや文化を通じた国際貢献、レガシーなどについて議論、その内容を情報発信するとともに、世界遺産になっている神社仏閣等を活用した文化イベントを実施して、 2020 年に向けて、2016年から日本に注目が集まっていくような企画を考えています。

TJ: スーパーグローバル大学創成支援事業につ いて教えてください。
シモムラ: ご指摘があったスーパーグローバル大学創生支援は我が国の高等教育の国際競争力の向上に資するため、徹底した国際化と大学改革を進める大学を重点支援するものであ り、2014年9月に世界大学ランキングトップ100位入りを目指すトップ大学を13大学、先導的な取り組みにより、我が国の社会のグロー バル化を引っ張っていく大学を24大学、合計37大学を採択しました。この事業では、大学改革や国際化に係る数値の目標を設定してお り、10 年後には採択大学全体で、例えば外国人教員等の比率は約半数、外国語による授業科目比率は5分の1にする目標を掲げており、 学部一般入試でのTOEFL等の外部試験の活用を大幅に増加する予定であります。このスーパーグローバル大学は37大学ありまして、在 籍する学生数は、約55万人います。教職員数 が約8万人、合わせて約63万人と大規模であります。今後この規模で徹底した国際化と大学改革が進むことを考えると、スーパーグロー バル大学は非常に大きなインパクトを持つ取り組みになるのではないかと思います。10年 後には我が国の国際競争力が向上することによって、高等教育が大きく変わってくることを期待したいと思っています。

TJ: 海外から日本への留学生数、および日本から海外への留学生数を増やすための施策につ いて教えてください。
シモムラ: 2020年までにそれぞれ2倍にしていきたいと思っています。海外から日本に来る留学生を今の倍の約30万人、それから日本か ら海外に留学する学生を約12万人にしていきたいと思っています。この取り組みに加えて、2014年の4月から留学促進キャンペーン「ト ビタテ!留学 JAPAN」を展開しています。こ れは、すべて給付民間企業からのファンド・寄 付によって、日本の高校生や大学生を海外に無料で留学させるという仕組みです。また、海外の留学生に対しても、日本の大学を卒業した後に我が国やあるいは母国に戻って活躍しても らうためにも、日本企業への就職の可能性を大きく広げていくことが必要だと思っています。 また、海外の留学生に対しては奨学金をさらに拡充し、同時に海外の大学と日本の大学との教育連携を推進していきたいと思っています。

TJ: 大臣に就任されて以来、最大の功績は何だと思われますか。
シモムラ: 大臣に就任して2 年9ヶ月になろ うとしています。日本の文部科学大臣としては歴史の中でも非常に長い期間大臣をしており ます。今、私の担当は教育・文化・スポーツ・ サイエンス・テクノロジーなど幅広い分野で、 57 項目の同時改革を進めており、ひとつひと つについては説明する時間がありませんが、そ れだけの教育改革を進めていくことで、教育は 未来への先行投資であり、人づくりが国づくり である、教育は政策の中でも最も重要なテーマ で力を入れるべきものである、そういう国民の共通認識が今まで以上に広がってきたのではないかと思います。そのためには教育における財源もきちんと確保していく必要があると思いますが、これから教育ムーブメントを起こすことによって、日本に住んでいるすべての人た ち一人一人にチャンス・可能性を提供でき、未来に対して志や夢を持ち続けることができる、 そういう思いを持って環境作りを行っていきたいと思っています。tj

 

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Written By:

Anthony Al-Jamie

Anthony Al-Jamie lived and worked in Japan for over 20 years. His in-depth understanding of Japanese language and culture has allowed him to carry out interviews with many of the most renowned individuals in Japan. He first began writing for the Tokyo Journal in the 1990s as Education Editor, later he was promoted to Senior Editor, and eventually International Editor and Executive Editor. He currently serves the Tokyo Journal as Editor-in-Chief.



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